大槻レディースクリニック
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大阪府堺市南区茶山台1丁目2番4号 バンジョ西館3階メディカルセンター
 
 

診療内容


子宮頸がんワクチンと副作用

    子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種が、公費補助のもとに広まりつつある中で、副作用問題がマスコミで大きく取り上げられました。マスコミ報道しか情報源のない患者さんやご家族の方が、子宮頸がんワクチンの接種を躊躇されることは理解できます。厚生労働省も「積極的にはお勧めしていません」「接種に当たっては、有効性とリスクとを理解したうえで受けてください」と、案内しています。HPVワクチンは、接種してはいけない危険なワクチンなのでしょうか。もう一度、HPVワクチンの効果や副作用を考えてみましょう。
  1. 子宮頸がん;日本では、毎年15,000人が子宮がんにかかり、そのうち3,500人が死亡しています。子宮がんにかかる年齢が最近は若年化し、20-30歳代の患者さんが増加してきています。しかも、欧米の子宮がん検診率(80%)に比べ、日本は20%と低いうえに、子宮がん検診を受ける方が20-30歳代では特に少なく、若年での死亡率も増加してきています。子宮がんは、早期発見が重要です。定期健診で早期の異常が見つかれば、子宮の温存もできます。

  2. 子宮がんの原因;ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起こります。一度感染しても、多くは排除されますが、感染が持続する場合は、子宮頚部異形成の時期を経て子宮頸がんが発生してきます。子宮頚癌に関連する18種類のHPVの中から、代表的な16,18型のHPVを含むワクチンが作られました。16,18型のHPVは子宮頚癌の70%を占めていて、若年者ではさらに高頻度です。

    子宮がんから身を守るためには、20歳代から検診を受けることが大事です。さらに可能であれば、予防が理想的です。予防のためには、HPVワクチン接種をすることになります。

  3. 子宮頚癌ワクチンの効果;子宮頚癌ワクチン接種は2006年にオーストラリアで学校接種が始まり、多くの先進国で広く接種されています。男性にも接種している国もあります。現在のところワクチンに含まれている16,18型のHPVに関係する子宮頚部病変(異形成、癌)は、防御されています。6,11型HPVを含むワクチンでは、コンジローマも防御できています。(コンジローマは外陰部にできる“いぼ”ですが、妊婦さんが持っていると、新生児の咽頭・気管にも感染し、繰り返し手術をしても難治性の病変を引き起こします。)

  4. 子宮頸がんワクチンの副反応;副反応は、軽度のものと重篤なものとがあります。比較的軽度な副反応は、発熱、接種部位の痛み・腫れ、注射の痛み・恐怖による失神があります。これらは、他の薬剤の注射、採血でもしばしば見られます。重篤な副反応は、アナフィラキシー(重いアレルギー)、ギランバレー症候群(手足の神経障害)、急性散在性脳髄膜炎(頭痛、意識低下、脳神経の疾患)があります。これらは、およそ100万から400万接種に1回起こります。また持続的な体の疼痛を訴える、複合性局所疼痛症候群(CRPS)があります。現在、820万接種が行われた中で、3例のCRPSが発症しています。この副反応がマスコミで報道されました。一時は歩行困難になりましたが、その後新聞記事によると通学できる状態になったと記載されています。マスコミ報道を見ると、多くの人が副作用で苦しんでいるように思えてしまいますが、発生率は欧米と同様に、あまり高くはありません。CRPSは、ワクチン成分によって起こるものではなく、外傷、骨折、注射針などの刺激がきっかけになって発症すると考えられています。注射方法が筋肉内の注射なので、皮下注射に比べ痛みが強いことが一因かもしれません。子宮頸がんワクチンの副反応で重篤と判定されたものの発生率は、インフルエンザ、4種混合、不活化ポリオよりは高いですが、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、日本脳炎ワクチンと比較すると、ほぼ同等かやや高い程度です。欧米で、副作用があるとの理由で子宮頸がんワクチンを中止した国は皆無です。

  5. 副反応により医療機関での治療が必要になった場合;市区町村の予防接種担当課へ御相談ください。健康被害が予防接種によって引き起こされたと国の審議会で認められた場合、法律に基づき救済が受けられます。

これから子宮頚癌ワクチンを接種しようか考えておられる方(家族の方)は、上記の説明を読んでいただき判断していただくことになります。ワクチン接種だけでなく、治療薬による副反応、手術や検査に伴う合併症など、望まない結果が起こる可能性をゼロにすることはできません。しかしながら、何もしないで病気にかかってしまうことも大変です。最近風疹が流行して、先天風疹症候群にならないよう緊急のワクチン接種が行われていますが、これも過去に副作用を心配して予防接種を控えた反動です。子宮頸がんワクチンも、頚癌の発生数や副反応の発生率から、得られるものの大きさと、副反応のバランスを御自分で考えていただき、接種するかどうか決めてください。また、定期的な子宮がん検診もぜひ受けるようにしてください。
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